「AIを使えばアプリを作れる」という話は、もうそれほど珍しくなくなってきました。
ただ、実際にやってみると、アプリは動けば完成というわけではないんですよね。
自分の端末で試作品を動かすところと、誰かがApp Storeからダウンロードして、安心して使える状態にするところには、まだかなり距離があります。
今回は、その距離を初めて自分で最後まで進んだ話です。
「チャットえほん」をアプリにしました
しのぴとチャット形式で会話しながらストーリーを楽しめる、子どものためのインタラクティブ絵本「チャットえほん」が、iPhoneアプリになりました。
お話の途中で質問に答えたり、次にどうするかを選んだりすることで、子どもがただの読者ではなく、物語の登場人物になっていく絵本です。
キャラクターが入力した名前を呼んでくれたり、選択によって結末が変わったりします。全33話を収録していて、オフラインでも遊べます。
対象は4〜8歳くらいの子どもと、その保護者です。子ども向けなので、広告や課金、外部リンクは入れず、名前や遊んだ記録も端末の中だけに保存する設計にしました。
Fableを使うようになってから、既存アプリの改修は自分でも少しずつできるようになっていました。
ただ、自分でゼロから作って、App Storeで公開されるところまで持っていったのは、今回が初めてだったかもしれません。Xにも書いたのですが、ここは自分の中ではけっこう大きな変化でした。
「作れる」と「公開できる」は違う
AIを使った開発では、最初の画面を作ったり、機能を動かしたりするところまでは、かなり速く進むようになっています。
一方で、公開するには細かい判断がたくさん残ります。
実際の端末でちゃんと動くのか、初めて使う人が迷わず操作できるのか、データをどこに保存するのか。アイコンや紹介画像、アプリの説明文、プライバシー情報も用意しなければいけません。
App Storeにビルドを登録して審査に提出し、問題が見つかれば修正する。コードを書く以外にも、最後まで終わらせるための作業がかなりあります。
AIによってコードを書くハードルは下がりましたが、何を公開してよいのかを判断する責任まで、AIに渡せるわけではありません。
特に今回は子ども向けのアプリなので、機能を増やすことより、安心して使える状態にすることのほうが大事でした。
ここは、実際に公開しようとしないと見えてこない部分かなと思っています。
子ども向けアプリには、二人のユーザーがいる
今回の開発で意識したのが、子ども向けアプリには二つの視点が必要だということです。
実際に操作するのは子どもですが、そのアプリを子どもに渡してよいかを判断するのは親です。
まず、子どもの視点では、画面を何度も連打するような、大人があまりしない操作を想定しました。
大人がアプリを確認すると、説明を読んで、ボタンが表示されるのを待ってから、一度ずつ押します。でも、子どもが開発者の想定した順番どおりに操作してくれるとは限りません。
同じ場所を何度も連打したらどうなるのか。想定とは違う操作をしても、表示がおかしくなったり、アプリが動かなくなったりしないか。
そうした子ども特有の行動を想定したユーザーテストを、Fableと一緒に行いました。
もう一つが、子どもを持つ親の視点です。
子どもに見せられない文章や画像が入っていないか、不安になるような表現はないか。意図しない外部サイトへの移動や、広告、課金につながる要素はないか。どんな情報を保存するのかも含めて、「自分の子どもに安心して渡せるか」という視点から確認しました。
「チャットえほん」で広告や課金、外部リンクを入れず、名前や遊んだ記録も端末内だけに保存する設計にしたのは、この親側の視点があったからです。
これ、けっこう大事で、子どもが楽しく使えるだけでは、子ども向けのサービスとしては十分ではないんですよね。
子どもにとって楽しく、親にとって安心できる。その両方がそろって、初めて使ってもらえるものになるのかなと思っています。
AIはコードを書くためだけのものではない
AIを使った開発というと、どうしても「どれだけ速くコードを書けたか」に注目が集まります。
ただ、今回Fableと一緒に進めてみて、AIはコードを書くためだけのものではないと感じました。
子どもの立場から操作を考えたり、親の立場から内容や安全性を確認したり、自分一人では見落としそうな問題を洗い出す相手にもなります。
開発者として画面を見ていると、どうしても正しく動かす方法を知っている前提で確認してしまいます。さらに、自分の中にない立場を想像するのにも限界があります。
そこでFableに子ども側、親側の視点を持ってもらい、別の角度からアプリを確認していきました。
何が言いたいかというと、AIは「作業を代わりにやってくれるもの」から、「違う立場で一緒に考えてくれるもの」にもなってきているということです。
これはアプリ開発に限らないと思っています。
サービスを作るときに、実際に使う人だけではなく、その周りにいる人の気持ちまで考えられるか。使いやすさだけではなく、不安や抵抗がどこにあるのかまで想像できるか。
AIに複数の立場を持ってもらうことで、小さなチームや個人でも、検討できる範囲を広げられるのかもしれません。
アイデアとユーザーの距離が短くなる
今回いちばん面白いと感じたのは、AIを使ってアプリを作れたことそのものではありません。
アイデアを形にして、いろいろな立場からテストし、問題を探し、公開するところまで、AIと一緒に進められたことです。
これまでは、「こんなものがあったら面白そう」と思っても、開発の予算や人員を考えたところで止まるアイデアがたくさんありました。
それがAIによって、小さく作って、テストして、公開し、実際に使ってもらうところまで進めるようになってきた。
もちろん、Fableと行ったテストだけで十分という話ではありません。
実際の子どもがどんなタイミングで画面を触り、どこで迷い、何を繰り返すのか。親がどこに安心を感じ、どんなところに不安を持つのかは、実際に使ってもらわないと分からない部分があります。
「チャットえほん」も、完成された正解というより実験です。
キャラクターと会話しながら読むことで、普通の絵本とは違う体験が生まれるのか。子どもはどんな選択をして、どこを何度も読み返すのか。リーリーたちのことを、物語の外でも身近に感じてもらえるのか。
ここからは、実際の子どもや親の反応を見ながら、想定できなかった操作や不安を拾い、Fableとも相談しつつ少しずつ直していこうと思っています。
よかったら「チャットえほん」で、しのぴたちとの物語を遊んでみてください。
https://apps.apple.com/jp/app/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%88%E3%81%BB%E3%82%93-%E3%81%97%E3%81%AE%E3%81%B3%E3%81%AE%E3%81%97%E3%81%AE%E3%81%B4/id6800106417


チャット絵本でしのぴ達と遊んでみます‼️
おもしろそうですね✨